Special Interview vol. 14

 
 

自らが率いるリズムパフォーマンスグループ『Traveling Souls』や

各界から迎えたトッププレイヤーとともに

3月末の2日間、 ライブ『HARAJUKU BEAT STREET』を行うSUJI TAP さん。


目指すは、“未だかつてないリズム・エンターテインメント”。


vol.1のインタビューにご登場いただいた時は少ししかお話を伺えなかったので、

今回は改めてたっぷりと、今、思うことのあれこれを

ロングインタビューでお伝えします。



●SUJI TAPオフィシャルWEBサイト  http://sujitap.jp


●HARAJUKU BEAT STREET オフィシャルWEBサイト 

http://www.lapnet.jp/eventinfo/special/lm/hbs/


★『THE STRiPES』を離れてソロ活動をスタートさせてから、4年以上が経ちました。タップのスタイルや仕事への取り組み方に変化を感じるところはありますか?


 基本的な部分は変わってはいないと思うんですけど、自分ひとりで100人とか200人とかいうお客さんと会話していく手法が、最近、やっと少し見えてきたかなと思います。


 リズムとダンス的な部分の両方を意識してるんですけど、以前は思っていても出来なかったようなことが、少しずつ具現化できるようになって来たというのもありますね。伝えたいことがひとつにギュッとまとまって、メッセージ性が強くなってきたというか。


 あと、自分の内面的な部分も変わって来たかなと思います。


★それはどのような変化ですか?


 まず、周りの人たちに対しての尊敬の念や感謝の念が日々、強くなってきているというのはありますね。あと、「ここまで足を運んでくれて、本当にありがとうございます」という、お客さんに対する感謝の気持ちも。だからお客さんの前で踊る時に、“自分本位じゃない”ってことが大事だって思うようになりました。


 前は、自分のすごさを見せたいっていう意識が強かったんですけど、最近は自分の思いをお客さんに伝えたい、 お客さんと気持ちをひとつにしたいという気持ちが強いですね、内面的なことで言えば。


★そう思うようになったのには、何かきっかけがあったんでしょうか?


 やっぱりソロになったことが大きいですね。公演ひとつにしても制作的な部分にまで関わるようになって、踊って行くこと、続けて行くことはこんなに大変なことなんだということも、お客さんやスタッフや共演者など周りの人がいないと成り立たないんだということもわかって来たので。


 ソロになる前の自分と今の自分との、いちばん大きな違いはそのへんにあるんじゃないかと思います。


★ソロになった当初は、いろいろギャップを感じたこともありましたか?


 ありましたね。何に驚いたって、自分が世間知らずなことに驚きました(笑)。普段、体を動かしてますから、自分で板を運んだりとかは全然苦にならなかったんですよ。でも、自分は何も知らないんだっていうことに気づかされることが多くて、それがかなりショックでしたね。


 たとえば、イベントをやろうという時に企業に協賛をお願いしに行ってもプレゼンが全然上手くできなかったりとか。マネージャーの存在意義とか、それぞれの世界に専門家がいる意味とか、そんなことすら全然わかってなかった、そんな自分にビックリでした(笑)。


★その頃、4年後の今の自分を想像してましたか?


 正直言って、もっといい環境にいるんじゃないかと思ってました(笑)。それまでは“人にステージに上げてもらってた”状態で、自分で一から何かをやって行くっていうことはなかったのに自分の力を過信してた部分もあったんでしょうね。


 今は、しっかりと現実と戦って行かないといけないんで大変な部分もありますけど、でも、それがもしかしたら、僕にとって大切な“教え”だったのかなと思います。


 そう言う意味では、ソロになった頃、「何年後かに、こういう風になっていたい」と思っていた人間になっていなくてよかったのかもしれないですね。すんなり行ってたらお調子に乗って、勘違いしてたかもしれませんから。


★最近はステップもシンプルになって来たような気がしますが。


 それはありますね。ここ2年くらい、レナード衛藤さんや筑紫寿楽さんといった和太鼓奏者の方々と一緒に仕事させてもらう機会が増えて、大太鼓が叩くようなシンプルなリズムがかっこいいなと思ったんです。前は細かくてマニアックな技にこだわっていたんですけど、タップを知らない一般の人の心にもストレートに響く“ビート”を届けたいって思うようになったんですよね。


★昨年は、レナードさんのヨーロッパツアーにも参加しましたね。


 はい。和太鼓、タップ、ギターっていう編成だったんですけど、和太鼓もギターもタップもそれぞれの役目を果たしつつ、ちゃんとバランスをとってアンサンブルを創って行くという、すごくいい経験をさせてもらいました。


★海外ということで、観客の反応の違いも感じたのではないですか。


 そうですね。やっぱり“和太鼓+タップ”という異色の組み合わせということもあって、お客さんの反応はよかったです。


 特に印象に残っているのは、ドイツのデュッセルドルフでの公演ですね。


ジャパンデーの野外フェスに参加したんですけど、これまで見たことがないようなすごい数の人たちで目の前の土地が見渡す限りどこまでも全部、埋めつくされているんですよ。それだけたくさんの人の前で踊れるということに感動しました。


★貴重な経験でしたね。


 はい。そんな経験も生かしつつ、自分自身の次の課題としては、日本という土地で、日本の人に評価してもらえる作品づくりをしたいと思ってます。「こんなもの見たことないよ」って、日本の人たちに言ってもらえるものを創りたいんです。それによってタップダンスをもっと広めて行くことが出来たらと思うので。


★そのためのチャレンジのひとつが、2009年にスタートさせたリズムパフォーマンスグループ『Traveling Souls』ということですか?


 そうですね。そろそろ自分の周りのパーカッショニストの人たちとユニットを組んで何か出来ないかと思ったことがひとつのきっかけだったんですけど、やっぱり自分自身のチャレンジとして、まだ誰もやったことのないことをやってみたいというのが大きいですね。


★誰もやったことのないもの。具体的に言うとどういうものなんでしょうか。


 “タップダンサーがプロデュースするリズムパフォーマンスグループ”。そして“日本人としての表現”ですね。


 “タップダンス+ジャズ”っていう伝統的な組み合わせも大切にして行きたいと思っているんですけど、僕自身のチャレンジとして、あえてそこじゃない部分を引き出して行って、世代を超えてたくさんの方たちに見てもらえるエンターテインメントショーを創りたいんです。


 海外には『STOMP』とか『BLUE MAN』という素晴らしい作品がありますけど、それとはまた違うものを日本でタップダンサーが作ったことは、未だかつてなかったんじゃないかと思うんで。


 それを視野に入れて、『Traveling Souls』というグループを去年、立ち上げて、ライブハウスで2回、次にちょっと広さのあるクラブで1回、というように3ヶ月おきに計画的にライブをやって可能性を探って。それを基盤に2010年の方針を考えて、今に至っているという感じです。


★『Traveling Souls』には、タップダンサー以外のメンバーも加わっていますよね。どんな経緯でこういう構成になったんですか?


 まず、パーカッショニストのよしうらけんじさん。けんじさんは僕がソロになってからたびたび、ライブに参加してもらってたんですけど、その中でけんじさんのパフォーマン
スと音楽性というのは、すごくエンターテインメントしているっていうことを感じてたんで、ぜひ主軸になってやってもらいたいとお願いしました。


 それからブレスのMaLさん。MaLさんも時々一緒に仕事させてもらって来て、体ひとつで、呼吸ひとつでリズムを創り上げて行くっていうダイナミックなところにひかれていたので。


 パーカッションのバンちゃん(坂東邦明)は、けんじさんとはひと味違う熱さと個性を持つパーカッショニストとして加わってもらいたいと思って声をかけました。


 タップダンサーについてはまず、Satomiちゃんと群青と僕の3人でスタートして。前回のライブではRON×llさん、洞至、Yoshikoちゃんに加わってもらいました。


 まあ、パーカッショニストもタップダンサーも、基本的には人柄で選んでます。結局のところ(笑)。お互いがお互いを尊重出来るということ、それと、このメンツが集まったら面白いんじゃないじゃないかということですね。


 でも、『Traveling Souls』に関してはタップダンサーにしても、パーカッショニストにしても、ある程度、流動的に考えてますので、メンバーは今後も入れ替わっていく可能性があります。


★あえて流動的にする理由は何ですか?


 人間同士のやりとりですから、活動して行く中で、「やっぱり方向性が違います」っていう人が絶対出て来ないとは言えないし、それなのにお互いを鎖でつなぎたくないなと思うんです。


 でも、時に意見の違いはあっても、みんながそれぞれ「ここでこういうことを表現したい」という強い意志を持って臨んでいれば、必ず一緒にやって行けると思うんです。そのためにはまず何より、僕がしっかりしなくちゃいけないんですけど。


★先ほど「日本人としての表現を目指したい」というお話がありました。SUJIさんの目指す“日本人としての表現”ってどんなものなんでしょうか。


 ある意味、戦後の日本は“日本”という国じゃなくなったんじゃないかとも思うんですね。自分という人間もそのいい例で、日本人だけど、昔のような“日本人”じゃない。だから、日本人らしさを頑なに追求しようとしても、それはそれで堂々巡りになっちゃうんですよね。


 それじゃあ、どうしたらいいんだろうと考えても、なかなか答は見つからない。それならとにかく進んで行くしかないじゃないかと。


 シンプルに、誰のマネでもなく、今、自分がしたいこと、出来ることを伝えて行くことが”日本人としての表現”なんじゃないかって最近は思ってます。 


 例えば、この国にはいろんな国からいろんな音楽が入って来ていて、いろんな音楽性があって、それにはいい影響とあまりよくない影響の両面があるように思うんですよね。


 でも、僕たちはあえてひとつのものだけにこだわるんじゃなくて、その“良くも悪くも”という部分を出しちゃおうと。この国にはいろんな音楽性が混在している、っていうこ
とをいい意味に捉えれば、ジャズを聴いても、ラテンを聴いても、アフリカンを聴いても、お客さんは反応してくれるってことですから。


 僕たちが今やってるタップダンスにしても、主にアメリカから伝わってきているわけですけど、自分たちには日本人の血が流れているし、元々のカルチャーも違いますから、体の中に流れてるリズムもアメリカ人とは全然違うんですよね。


 それをきちんと認めた上で、僕らにしか出来ない表現を見つけて行けたらいいなと思ってます。


★そういうことも含めて、SUJIさんは普段からカフェに一人で何時間もこもって、考えたことをノートにまとめたり、ものすごくいろんなことを考えているという印象が強いんですが。


 確かに、考えるという作業にはすごく長い時間を費やしてますね。たとえば街頭でストリートパフォーマンスをすれば「初めて見ました」っていう人が9割で、そのこと自体がもう考える要因ですよね。どうしたらタップダンスをもっと世の中に広めて行けるんだろうって。


★昔から考えるタイプだったんですか?


 悔しいんですよね、いつもいつも悔しいことばっかりで。アルバイトをしないと生活出来なかった頃も悔しかったし、タップダンスを知らない人も多くて、時に軽く見られちゃうこともあったりで、それも悔しかったし。じゃあ一刻も早くこの状況を打破するには、どうしたらいいのかと。


 もちろん実際には、どんなに考えてもうまく行かないことが多いし、時にしっぺ返しもくらうんですよね。でも、たとえ大変でも、新しいレールを敷いて行かないといけないんですよね。そのためにどうしたらいいのかを考える。そうしないと、いつまでも状況は改善されないですから。


★かなりしんどい生き方ですよね。


 かもしれませんね。だから自分もたまに「もう今のままでいいかな」と諦めそうになることはありますよ。


 でも、本当にそう思うことがあったら、その時、自分とタップダンスとの関係は終わるんじゃないかと思うんです。前に進もうとすることを止めたら、もう自分の人生において、この先いいことは一個もないんじゃないかと思って踏みとどまるんです。そしてまた、どうすればいいんだろうと考える(笑)。


★実際うまく行くことは少ないなら、考えても無駄だと思う人もいますよね。

 

 その人が何を求めているのか、ですよね。一生懸命考えて、1回やってみてうまく行かなかったから無駄だと思うのか、それはさらにその先への投資だと思うのか。


 危ない橋だとわかっていても、そこを渡ったあとに何かがあるんじゃないかと思う気持ちが大事なんじゃないかと僕は思うんです。でも、誰もがその危ない橋を渡れるとは思ってないです。


★タップダンスを広めたいというSUJIさんの夢が形になるまでには、もしかしたら時間がかかるかもしれないですよね。その成果が出た時にSUJIさんが例えば80歳になっていたとしたら、悔しくないですか?


 全然悔しくないですよ。要は自分がどういう人生を送ったかっていうことなんで。


 力を温存したり、貯金をチマチマ使っていくような人生なんて、俺自身は生きてる意味を感じないですから。毎日毎日、全力で生きて、チャレンジし続けたいなと思うんです。それをみんなでやって行きたいんですよね。自分だけよければいいっていう考え方じゃなくて。


 自分だけがよければいいなら、今、僕がやっていることの中にも、やらなくていいことがいくつもあるんですよ。でも、それをやらなければ、胸張って生きて行けないですから。もっとみんなでチャレンジして、2年後、3年後、タップダンスを取り巻く状況を少しでもよくして行こうよ、ということです。


★周りの人のために、そして周りの人と一緒に、というSUJIさんの考え方はどなたの影響なんでしょう。


 母ですね。「自分だけじゃダメでしょ。周りの人に気を配りなさい」と小さい時からずっと言われて来たので。母の我慢強い気性もずっと見て育って来ましたし。父親も表でいろいろ大変なことがあるのはわかっているので尊敬してますけど、やっぱり女性って大変だなというのは小さい頃から母を見て思っていましたから。


★理想の女性は、お母様ですか?


 そうかもしれませんね(笑)。(→ PART 2へ続く)




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