Shoes Stories vol.10
タップスの緩み
タップの動きはシューズにかなり大きな力と振動を与えますので、使っているうちにタップスにはどうしても緩みが生じて来ます。
その原因のひとつが、タップスのネジ穴の内側に残った削りムラです。ネジがしっかりと締まるようにネジ穴は精密に作られてはいますが、ネジ穴を作る工程でほんのわずかな凹凸ができてしまうことがあるんですね。
その小さな凹凸がタップを踏むことによって生じる振動によってポロッと取れたり削れたりするとネジ穴に遊びが出来て、タップスの緩みに繋がってしまうわけです。
職人がタップスを取り付ける時も、タップスをトントントンと叩いて振動を与えながら、遊びが出ないようにしっかり締めてはいるのですが、シューズを履いた時の体の重みや踊った時の振動によってかかる力はかなり大きなものなので。
同じように、靴底に接している側のタップスの表面のほんのわずかな凹凸が踏んでいるうちに削れて隙間が出来、ネジの緩みにつながることもあります。

そのまま放っておくとネジが動いて、さらにネジ穴が広がってしまう原因になりますので、「あれ、音が高くなったぞ」と思ったらすぐに締めることをお勧めします。
また、タップスのネジ穴はネジ山の形にあわせて奥に行くほど狭くなっていて、シューズの底に近い方が鋭角に細くなっているので、シューズを使ううちにこの部分が削れて、それが原因でネジ穴に遊びが出来ることもあります。
ベースメントではタップスの取り付け方として『標準付け』『密着付け』から選んでいただけるようになっていますが(Shoes Stories vol.4の『タップスのサイズと取り付け方法』を参照)、そもそもタップスをシューズにしっかりと密着させるための工法である密着付けでも、絶対に緩まないというわけではないんです。
さきほどお話した、タップスのネジ穴の削りムラや表面のわずかな凹凸が原因となる緩みは密着付けでも生じることがありますし、たとえばトゥ側のタップスで言えば、いろいろな方向から負荷がかかりやすいのは先端のネジ穴ですが、土踏まず側の2つの穴も、ヒールアップする時に靴底が曲がるのにともなって引っ張られるような形になって、かなり大きな力がかかるので、それもネジ穴の傷みにつながります。

密着付けのシューズでも、高温になりやすい場所や湿気の多い場所に置かないようにする、出来るだけ靴下を履く、シューズを履いた後は新聞紙を丸めて入れるなどして湿気を取る、2足以上持っている方は出来るだけ交替で履くようにする、といった配慮をしていただけると、タップスの緩み防止はもちろんのこと、革の劣化防止にもつながります。
タップスが薄くなっても温度が上がりやすくなるので、長く使っていらっしゃる方は減り具合を見ながらタップスの交換をされるとよいかと思います。

ただし、力いっぱいグイグイ締めるとネジ山をつぶしてしまいかねませんので、1/4周でも半周でも無理なく締まる範囲で締めるようにして下さい。
履いている時には視界に入りにくいタップスですが、タップダンサーの皆さんにとっては大切な楽器です。ネジの緩みにもこまめに気を配って、大切なシューズを末永く愛用していただけたらと思います。

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